気分最悪のまま、またカーキャリーに載せられて一時間ばかり移動した。着いた先は歴史を感じる城下町。下ろされたところは、なぜかトヨタの販売会社。やたらと高級車ばかりが並んでいる営業所である。僕のような小型車は一台も無い。なんだかどの車もデンとして、なんだかとっても澄ましている。
オーナーガウチョへの不信から「今度は何をされるのだろう」と不安でいっぱいだったが、着いていきなり洗車をしてもらった。思えば工場を出てから、まだ一度も洗車されていなかったし、長旅の疲れとスポイラーの一件があってから気分もすぐれなかったのだが、この洗車のおかげでちょっと気分がすっきりした。
しかも洗車はとても丁寧。ここにいる高級車たちはいつもこんな洗車をしてもらっているのだろうか?洗車用の粘土まで使ってとても細かなチリまでとってもらった。とってもピカピカな気分。うーん爽快。その後はドックに入って、強い日差しに照らされて火照っていたボディをクールダウン。やっぱり屋根の下は落ち着くねえ。
と機嫌も直りかけていると、今度は何やらベタベタしたものを塗りたくられた。一体なんだと塗られたものを見てみると、アメリカのデュポン社が開発したテフロンの複合材と書いてある。ゲッ!テフロンと言えば料理に使うフライパンに塗られているやつじゃないか。僕はフライパンじゃないぞ!と叫んでいるのもつかの間、アッという間に体中塗りたくられてしまった。せっかく洗車でさっぱりしてたのに、とてもベトベト。梅雨も明けたっていうのに、嫌だなあこのベトベト感。
でしばらく経つと、そのベトベトがカチカチになってきた。なんだかボディーがピンと突っ張ったみたいになって、僕の表情もギゴチない。すると今度はぐるぐる回るポリッシャーでやさしく磨いてくれた。そうするとカチカチだったボディも少し滑らかになって落ち着いてきた。
メンテナンスの人が、これはCPCペイントシーラントというものだと教えてくれた。テフロンでコーティングし紫外線・酸性雨・水アカ・ピッチ・タールなんかから塗装を守るそうだ。新車のときにやっておくと、なんと5年間完全ノーワックス。しかも一年ごとにメンテナンスしてくれて、5年間の保証付き。費用は僕の場合小型車なんで5万円だそうだ。年1万円って計算。まあ洗車にお金をかけることを思えば安いもんかな。新車の輝きを最低5年は保ってもらえると聞いて、落ち込みかけていた気分もちょっとだけ上昇。


そうこうしているうちにガウチョがまたやってきた。今度はちびな男の子を連れている。またまた嫌な予感。
予感的中。その子は僕の近くに来るなり、ボディや窓ガラスを汚れた手でベタベタ触り始めた。しかも僕のことを「とうちゃん号」と呼んでいる。僕の名前は「とうちゃん号」?冗談じゃない。そんなダサい名前絶対に嫌だ!
ああ。せっかく綺麗にしてもらったのに。毎回こんな調子なんだろうか?本当に先が思いやられる。
